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【ワークライフバランスを見直す】現代人こそ学ぶべき「ウチナータイム」Part2

【ワークライフバランスを見直す】現代人こそ学ぶべき「ウチナータイム」Part2


実質賃金の下落、不安定な雇用事情、物価高騰、円安に金融ショック、そして疫病に紛争。
日本社会をはじめ、世界は長きに渡り暗澹(あんたん)たる状況の中にあります。キャリアの短い若い会社員の多くは将来に漠然とした不安を抱え、副業を始めたりキャリアステップを真剣に考えたりしている現状です。
前回は、日本社会のそんな厳しい現実を根底から覆すような価値観「ウチナータイム」についてお話ししました。
今回は、沖縄県独特の時間感覚「ウチナータイム」に続き、ベトナムの人々の国民性についてお話しします。
まだご覧になっていない方は、ぜひ前回の記事からご覧ください。

ベトナムの人々の国民性


世界各国、それぞれの国にはさまざまな歴史と伝統文化があり、国民性や慣習も多種多様です。食文化の違いから気候の違い、生活習慣の違いから信仰の違いまで、人類は文字通り多様です。
しかし、だからこそ自分が生きる狭い世界の常識にとらわれてしまうと、異なる世界で生きる人々の常識に面食らうことが往々にしてあります。
そんな経験をするたびに筆者は、「自分はまだまだ井の中の蛙だな」と自分自身を戒める思いです。
さて、とあるインバウンド事業のサポート業務を通して、筆者はベトナムの方々との交流を図る機会に恵まれました。
そこで知ったのは、ベトナム現地では昼間から酒を飲んで昼寝をしている若い男性が珍しくない──という現実でした。
少し深掘りしてお話をうかがってみると「自宅でこっそり酒を嗜む──」という調子でもなく、むしろ道端や玄関先などでご近所さんや友人などとワイワイ楽しみながらそのまま居眠り──といった具合です。
働きもせず、あまつさえ昼間から酒を食らって呑気に過ごすベトナムの(一部の)男性。
これがもし日本だったら、おそらくそんな若者は周囲からたしなめられるでしょう。
「働きもせずに昼間からフラフラして」
「昼間から酒を飲んで酔っ払うなど何事だ」
「周りはみんな頑張っているのにどういうつもりだ」
──といった具合でしょうか。
そこで私は、この話を聞かせてくださった数人のベトナム人女性にこうたずねました。
「あなたたちはそのような男性に対して、不快感や嫌悪感を覚えますか?」
すると彼女たちは口をそろえてこう回答しました。
「何とも思いません。なぜなら彼らの人生だから。働くか働かないか、お酒を飲むか飲まないかは彼らが決めることであり、私たちがとやかく言うことではありません」
ジェンダーギャップゆえの悲しい寛容さでなく、「個のライフスタイルをフラットに尊重する土壌の違い」を、彼らのトーンから筆者は確かに感じたのでした。

沖縄文化とベトナム文化の類似点


沖縄県の県民性とベトナムの国民性に、筆者は近しいものを感じています。
両者のルーツや背景はもちろん異なりますが、南国らしい温暖な気候の影響でしょうか。都市部に暮らす現代日本人が改めて学ぶべき「現代社会を幸福に生きるヒント」があるように思うのです。
特に以下の3点は両者の素敵な共通点であり、現代日本にもっとも必要な要素だと感じます。

1.濃密な人間関係

自己責任論が市民権を得て一人歩きしているように見える近年の日本社会は、人間関係が実に希薄です。
核家族化の促進とともに、個人に対する社会的責任が過剰なまでに問われるようになった日本社会。その結果、掛け値なしの人間関係が幻想のようになってしまいました。
育児の責任すら母親が一身に背負い、もはや「子どもは地域で育てるもの」という観念すらほとんどありません。むしろ子どもが遊ぶ声や、保育園の園児たちの声にご近隣からクレームすら飛ぶ世知辛い時代です(もちろん各々の事情があるはずですが)。
自己責任論は利己主義ばかりを助長し、地域社会や人々の絆、愛、信頼といったものを鈍くしてしまったのではないか。我々は今こそ自問自答しなければならない局面に差し掛かっているのではないか──という危機感を覚えるのは筆者だけではないはずです。

2.個性への尊重意識

都市部ほど模範性が求められる傾向にありますが、その理由はただ一つ。模範的な選択は「既存のビジネスモデルの生産性に対しもっとも合理的にコミットしやすいから」です。
ですから都市部ほど人々の行動様式が画一的になりやすい一方、高い成果が求められるだけに先進性や革新性が必要で、商取引における競争が激化しやすい傾向にあります。
労働者には高い社会適応能力が求められますから、ストレス値が高くなりやすい傾向もあるようです。
都市部に暮らす労働者自身がそんな環境に消耗してしまっている現代において、都市部のビジネス様式は既に半分程度が崩壊しているのかもしれない──と思わざるを得ない現状です。
当マガジンをお読みの皆様も、大なり小なり心当たりがあるのではないでしょうか。
しかし、沖縄やベトナムの方々の人間関係やライフスタイルでは、どうやら合理性がそれほど重視されないようです。
そもそも人間はもともと感覚的な生き物であり、決して合理的な生き物ではありません。
だからこそベトナムの人々は昼から酒をあおる人を責めませんし、沖縄の人々はウチナータイムで快適に暮らしているのでしょう。
「そもそも人間は多様だし生き方も多様である」ということを、フラットに受け入れているような印象です。
彼らのライフスタイルは「QOLが低下しがちな都市的規範モデル」へのアンチテーゼのようであり、実は人間の生き方の根源に迫るような、我々が見失ってしまった至極シンプルで単純明快なセオリーに基づいているのかもしれません。

3.心のゆとり

沖縄の人々やベトナムの人々にもっとも見習いたいのが、「心のゆとり」です。
私が出会った沖縄やベトナムの大半の方は決して裕福な境遇でなく、どちらかというとむしろ困窮とまではいかずとも暮らしに困ることはある──くらいの生活水準でした。
しかし、だからといって彼らの多くが不幸せそうに見えたかというと、まったくそんなことはありません。それどころか屈託ない明るい笑顔で、家族や友人に囲まれながら日々を楽しそうに過ごしているようにさえ見えたものです。
仮に経済的に貧しかったとしても、豊かな心で毎日を生きているような彼らの生命力みなぎる姿が印象的でした。
筆者が自分のライフスタイルや、常識に則った自分の価値観に疑問を抱くようになった一つのきっかけでもあります。
お金への過剰な執着は、人生を豊かにするどころかむしろ自分や周りを不幸へ導く可能性がある──と気付いたのもちょうどこの頃でした。

現代日本人の課題とは


現代日本におけるあらゆる問題や課題の根底には、経済問題があります。
経済は流動的なものですから、良いときもあれば悪いときもあります。それは我々個人の力ではどうすることもできません。
だからこそ「お金」という価値観に依存せず、自分や周りの「人間としての根源的な幸福や喜び」を見出すスキルに価値があると筆者は思うのです。
お金に依存せずに幸福を見出すにはどうすればいいのか。
生活するためにはお金が必要ですし、幸福に生きるには自他の価値観を尊重できる心のゆとりも必要です。
両者を達成するキーワードが「ワークライフバランス」です。
ワーク・エンゲイジメント(働きがい)を高めるために、ラーケーションやワーケーションなどで休み方を設計する。あるいはワーカホリックを克服するために働き方を再設計する。
労働と休息を自分に合った形にデザインし最適化する上で、「自分と異なる常識で生きている人々」は多くの学びを与えてくれます。

異文化から新しい常識を学ぼう

沖縄の人々のウチナータイムと、ベトナムの人々の価値観。現代日本に生きる社会人こそ知っておきたいトピックについて、2話に渡りお話ししました。
異文化への知見は、狭い世界で生きている自分の殻を打ち破り、より広い世界へはばたくための道標です。
なお、休日と労働の相関性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧いただけば、本記事の主旨をより深くご理解いただけるかと思います。
厳しい局面にある現代社会を幸福に生き抜くために、あるいはワークライフバランスを最適化するために、我々は今こそ異文化から新しい常識を学ばなければならないのかもしれません。

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